父親の働き方が大きく変化 「仕事中心」から「家庭参加型」へ…アメリカ社会で進む“父親像”の転換

アメリカで、父親たちの働き方が大きく変わり始めている。

特に大学卒業資格を持つ父親の間で、「労働時間を減らし、その分を育児や家事へ回す」という動きが急速に広がっていることが、最新研究で明らかになった。

米American Institute for Boys and Men(AIBM)が発表した研究によると、5歳以下の子どもを持つ大学卒の父親は、パンデミック前と比較して週の労働時間が6時間以上減少していた。

一方で、育児や家事に費やす時間は週4時間以上増加していた。

つまり、“仕事から家庭へ”という時間配分の大規模シフトが起きているのである。

研究では、この変化は単なる「在宅勤務の増加」だけでは説明できず、父親像そのものが変化している可能性があると指摘している。


目次

「父親は仕事、母親は家庭」という構造が崩れ始めた

長年、アメリカ社会では、

・男性=稼ぐ側
・女性=家庭を担う側

という役割分担が根強く存在していた。

特に子どもが小さい家庭では、父親が長時間働き、母親が育児や家事の大部分を担う構造が一般的だった。

しかし今回の研究は、その“常識”が急速に変化していることを示している。

研究チームは、米労働統計局(BLS)のCurrent Population SurveyとAmerican Time Use Surveyを解析。

2017〜2019年と、2022〜2024年のデータを比較した。

対象は、

・全成人
・夫婦世帯
・5歳以下の子どもがいる家庭
・大学卒/非大学卒家庭

など複数グループに分けて分析された。

すると最も顕著な変化が見られたのが、「大学卒で幼い子どもを持つ父親」だった。


父親の労働時間は大幅減少

研究によると、夫婦間の「労働時間格差」はパンデミック前と比較して29.3%縮小していた。

その大部分は、「父親側の労働時間減少」によるものだった。

具体的には、

・父親の労働時間が週3.2時間減少
・母親の労働時間が週1.1時間増加

していた。

つまり女性が働く時間が増えただけではない。

男性自身が“仕事中心の生活”から距離を取り始めているのである。

特に大学卒の若い父親では、週6時間以上も労働時間が減少していた。

これは非常に大きな変化だ。

年間換算すると300時間以上になる。


減った時間は「余暇」ではなく家事・育児へ

興味深いのは、「減った仕事時間を何に使っているか」だった。

研究では、父親たちは単純に“楽をしている”わけではなかった。

むしろ、

・育児
・掃除
・洗濯
・食事準備
・家庭管理

などへ時間を振り向けていた。

若い父親たちの家事・育児時間は大きく増加。

男女間の家事格差は20.5%縮小した。

しかも増加したのは「子どもと遊ぶ時間」だけではない。

研究によると、

・一般的家事タスクの増加:2.4時間
・育児そのものの増加:1.6時間

だった。

つまり父親たちは、「家事の実務」まで担い始めている。

ここが重要な変化だ。


“リモートワーク革命”は父親を変えたのか

研究では、この変化の背景として「リモートワーク拡大」が大きく関係していることも示された。

大学卒の父親では、在宅勤務率が、

約11% → 36.9%

へ急増していた。

一方、非大学卒父親では17.7%に留まっていた。

つまり高学歴層ほど、“家庭に存在する時間”が増えたのである。

これは単なる通勤削減ではない。

家にいる時間が増えることで、

・子どもの送り迎え
・食事準備
・寝かしつけ
・家事分担

へ自然に関与しやすくなる。

結果として、“父親参加型家庭”が増えている可能性がある。


ただし「リモートワークだけでは説明できない」

しかし研究チームは、「在宅勤務だけでは今回の変化は説明できない」としている。

実際、統計解析では、リモートワークが父親の労働時間へ与えた影響は「週1.62時間減」に留まった。

つまり6時間減少の大部分は別要因である。

研究者はここで、「父親像そのものの価値観変化」が起きている可能性を指摘している。

かつて父親像は、

「家族を経済的に支える存在」

だった。

しかし近年は、

「家庭に積極参加する存在」

へ変化しつつある。

特にミレニアル世代やZ世代では、

・子どもとの時間を重視
・ワークライフバランス重視
・育児参加を当然視

する傾向が強まっている。

今回の研究は、そうした社会的変化を数字として示した可能性がある。


パンデミックは“父親の役割”を変えたのか

COVID-19パンデミックは、多くの家庭の働き方を強制的に変えた。

突然、自宅で仕事をする父親が増えた。

すると今まで見えなかったものが見えるようになった。

・家事量の多さ
・育児負担
・家庭運営の大変さ

である。

それまで「外で働く役割」に集中していた男性が、家庭内部のリアルを日常的に経験するようになった。

これが価値観変化につながった可能性は十分ある。

研究でも、「変化は家庭内部で起きている」と指摘されている。

実際、独身男性と独身女性では労働時間変化は小さかった。

つまり“父親になること”そのものが、働き方を変えているのである。


一方で「男性の仕事離れ」を懸念する声も

ただし、この変化を不安視する声もある。

現在アメリカでは、

・製造業
・物流
・建設
・輸送業

など、男性比率の高い産業で雇用変化が起きている。

一方で医療やケア分野など、“対人サービス産業”は拡大している。

研究では、「産業構造変化」が男性の働き方に影響している可能性も指摘された。

つまり、

“家庭重視”だけでなく、“男性労働市場の変化”も同時進行している可能性がある。

特に高学歴男性では、柔軟な働き方を選びやすい。

一方、低学歴層ではそうした選択肢が少なく、格差拡大につながる懸念もある。


「良い父親」の定義が変わり始めている

今回の研究が本当に示しているのは、単なる労働時間統計ではない。

それは、

「良い父親とは何か」

という社会価値観の変化である。

以前は、

・長時間働く
・高収入を得る
・家族を経済的に支える

ことが“理想の父親像”だった。

しかし現在は、

・子どもと関わる
・家事を分担する
・家庭時間を確保する

ことも重視され始めている。

これはアメリカだけの話ではない。

日本でも共働き世帯増加や育休制度拡充により、“父親参加型育児”は大きなテーマになっている。

今回の研究は、パンデミック後の社会が「父親の役割」を根本から変え始めている可能性を示している。


まとめ

米American Institute for Boys and Menの研究によると、大学卒で幼い子どもを持つ父親は、パンデミック後に労働時間を週6時間以上減らし、その分を育児や家事へ振り向けていることが明らかになった。

特に家事負担の増加が大きく、父親が“家庭運営そのもの”へ積極参加し始めている実態が浮かび上がった。

背景にはリモートワーク拡大だけでなく、「父親像そのものの変化」がある可能性が指摘されている。

一方で、男性中心産業の雇用変化や高学歴層との格差など、新たな社会課題も見え始めている。

パンデミックを経て、世界は単に“働き方”だけではなく、“父親とは何か”という価値観そのものを変え始めているのかもしれない。


参考文献

・American Institute for Boys and Men
・Bureau of Labor Statistics
・Current Population Survey
・American Time Use Survey
・IPUMS
・The Wall Street Journal
・McKinsey & Company
・U.S. Census Bureau
・Becker’s Hospital Review

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