孫と過ごす時間は高齢者の健康にどのような影響を与えるのだろうか。
2026年5月29日から31日にかけて京都市で開催された第17回日本プライマリ・ケア連合学会学術大会において、富山大学附属病院総合診療科の黒田格氏らは、孫との外出頻度と祖父母の健康状態との関連を調査した研究結果を報告した。その結果、週に1〜6回程度の頻度で孫と外出する高齢者は、自身の健康状態をより良好に評価する傾向があることが明らかになった。
富山県の「孫とおでかけ支援事業」に着目
研究の背景には、富山県が実施している「孫とおでかけ支援事業」がある。
この事業では、県内在住の祖父母が孫やひ孫とともに対象施設を利用する際、利用料金が無料となる。高齢者の外出機会を増やすことに加え、世代間交流の促進や家族関係の強化を目的としている。
一方で、こうした取り組みが実際に高齢者の健康にどのような影響を与えるのかについては、十分な検証が行われていなかった。
そこで研究グループは、孫との接触頻度と健康状態との関連を明らかにするため調査を実施した。
富山県在住の祖父母458人を対象に調査
研究はオンラインによる横断研究として実施された。
対象となったのは富山県在住で孫を持つ成人458人で、平均年齢は65歳、男性が62.0%を占めた。調査期間は2025年8月8日から20日まで。
研究では、
- 孫との外出頻度
- 孫の世話をする頻度
- 孫との同居の有無
を調査するとともに、抑うつ症状と主観的健康感を評価した。
抑うつ症状の評価にはPatient Health Questionnaire-2(PHQ-2)が用いられ、主観的健康感については4段階で自己評価を行った。
抑うつとの関連は認められず
解析の結果、孫との外出頻度や世話の頻度、同居の有無と抑うつ症状との間には有意な関連は認められなかった。
つまり、孫と多く接しているからといって、抑うつ症状が少なくなるという結果は得られなかったことになる。
高齢者のメンタルヘルスは身体機能や経済状況、人間関係など多様な要因の影響を受けるため、孫との関わりだけで説明することは難しいことが示唆された。
週1〜6回の外出で主観的健康感が向上
一方で興味深い結果も得られた。
主観的健康感について分析したところ、孫と週1〜6回外出している祖父母では、自身を健康だと評価する傾向が有意に高かった。
統計解析ではオッズ比3.45(95%信頼区間1.06–11.20、P=0.04)となり、週1〜6回の外出と良好な主観的健康感との関連が確認された。
さらに抑うつ症状の有無によって分析したところ、この関連は抑うつ群でより強く認められた。
抑うつ群ではオッズ比12.40(95%信頼区間1.64–94.40、P=0.015)となり、非抑うつ群よりも大きな効果が示された。
研究グループは、孫との適度な外出が孤独感の軽減や社会参加機会の増加につながる可能性を指摘している。
「適度な頻度」が重要な可能性
今回の研究で特徴的だったのは、「頻繁であること」よりも「適度な頻度」である点だ。
孫の世話を担うことは、高齢者にとって生きがいや役割意識につながる一方で、過度な負担となる場合もある。また同居によって身体的・精神的負担が増加するケースも考えられる。
黒田氏は、週1〜6回程度の外出は義務感や身体的負担が比較的少なく、純粋な交流や外出機会の増加につながる可能性があると考察している。
その結果として、主観的健康感の向上に結び付いている可能性があるという。
今後は因果関係の検証が課題
ただし、今回の研究は一時点での状況を分析した横断研究であり、因果関係を証明するものではない。
健康な人ほど孫と外出しやすい可能性もあり、「孫と外出するから健康になる」のか、「健康だから外出できる」のかは明らかではない。
また、オンライン調査による研究であることから、回答者の偏りが生じている可能性もある。
研究グループは今後、富山県の「孫とおでかけ支援事業」が実際に高齢者の健康へどのような影響を与えるのかについて、縦断研究を含めたさらなる検証が必要だとしている。
出典
m3.com医療ニュース「孫との外出が健康状態に好影響をもたらす?」(2026年6月3日掲載)


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