米バード大学学長が辞任 エプスタイン問題で浮上した“名門大学の倫理危機”

米ニューヨーク州の名門リベラルアーツ校・バード大学で、50年以上にわたり学長を務めてきたレオン・ボットスタイン氏が辞任を表明した。背景にあるのは、性犯罪者として知られるジェフリー・エプスタイン元被告との長年にわたる関係を巡る問題だ。

大学理事会が依頼した独立調査では、ボットスタイン氏がエプスタイン氏との関係を過小評価して説明していたことに加え、大学として学生を危険にさらす可能性のある判断を行っていたことが指摘された。

さらに、この問題は単なる「寄付者との不適切な関係」にとどまらず、バード大学内部に存在していた性加害対応の不備や、大学ガバナンスへの不信感にも発展している。

目次

半世紀以上大学を率いた学長が突然の退任

レオン・ボットスタイン氏は1975年にバード大学学長へ就任し、実に50年以上にわたり同大学を率いてきた人物だ。

在任中には、

  • 学生数拡大
  • 難民支援教育
  • 刑務所教育プログラム
  • 芸術・音楽教育強化
  • 社会的弱者への高等教育アクセス拡大

などを推進し、バード大学を米国屈指のリベラルアーツ教育機関へ押し上げたことで知られている。

しかし2026年4月30日、ボットスタイン氏は6月末での退任を発表。同日に公開されたWilmerHale法律事務所の調査報告概要が、その直接的な引き金となった。

エプスタイン元被告との“想像以上に深い関係”

「寄付集めのためだけ」ではなかった実態

ボットスタイン氏は2026年2月、学内コミュニティ向けメッセージで、

「エプスタイン氏との関係は大学への寄付を募るためだけだった」
「彼は友人ではなかった」

と説明していた。

しかし調査では、その説明と矛盾する内容が多数確認された。

報告書によると、ボットスタイン氏は2012年から2019年までの間に、

  • エプスタイン氏のニューヨーク邸宅を約25回訪問
  • 私有島「リトル・セント・ジェームズ島」に2日間滞在
  • 女性同伴のイベントやコンサートに参加
  • バード大学の演奏会などへエプスタイン氏を招待

していたという。

さらに2013年のメールでは、

「この新しい友情を大切に思っている」
「あなたの物事の進め方を尊敬している」

と記していたことも判明した。

これにより、単なる「寄付者対応」を超えた親密な関係性が疑問視されている。

性犯罪歴を知りながら接触継続

「再犯リスクが高い性犯罪者」と認識

問題をより深刻にしているのは、ボットスタイン氏がエプスタイン氏の性犯罪歴を認識した上で交流を続けていた点だ。

エプスタイン氏は2008年、未成年者買春関連で有罪判決を受けており、ニューヨーク州では最も危険度が高い「Level 3 Sex Offender(再犯リスクが高い性犯罪者)」に登録されていた。

調査では、ボットスタイン氏が2012年の時点でこれらの情報を把握していたことが確認されている。

それにもかかわらず交流を継続した結果、

  • エプスタイン氏の社会的信用を補強した可能性
  • 女性被害者への加害構造を間接的に支えた可能性
  • 学生を危険へさらした可能性

があったと報告書は指摘した。


「若い女性を被害者だと認識しなかった」

調査報告書の中でも特に批判を集めているのが、ボットスタイン氏の認識不足だ。

報告書によれば、同氏はエプスタイン氏の周囲にいた若い女性たちについて、

「被害者だとは思わなかった」

と説明している。

さらに、

  • 音楽活動支援
  • コンサート招待
  • キャリア相談
  • 家族との面会

など、エプスタイン氏が関係する若い女性たちへの支援を行っていた。

調査では、こうした行為が結果的に、

「大学学長がエプスタイン氏を保証しているように見えた可能性」

を指摘している。

学内で噴出した「性加害対応への不信」

学内で噴出した「性加害対応への不信」

今回の問題は、バード大学内部に以前から存在していた不満も表面化させた。

学生団体「Take Back Bard」は、大学側が長年にわたり性加害問題へ十分に対応してこなかったと主張している。

ある学生は、

「教員と学生の性的関係は公然の秘密だった」

と証言。

また、米大学で性暴力対応を担当する「Title IXオフィス」についても、

  • 相談しにくい
  • 被害者保護として機能していない
  • 学生が安心して訴えられない

などの批判が相次いでいる。

匿名の女子学生は、

「大学は外向きにはリベラルで民主主義を掲げるが、内部には家父長制的な文化が残っている」

と語った。

“資金調達至上主義”への批判

「サタンからでも金を受け取る」

調査では、ボットスタイン氏の資金調達手法にも疑問が呈された。

報告書によれば、同氏は理事会へ十分な説明をしないまま、エプスタイン関連団体からコンサルティング料を受け取っていた。

その資金は後に大学へ寄付されたとされるが、正式な透明性は確認できなかったという。

さらにボットスタイン氏は、

「神の仕事のためならサタンからでも金を受け取る」

と発言していたことが報告書で紹介されている。

この発言は、大学運営における「目的のためには資金源を問わない」という姿勢を象徴するものとして大きな批判を招いている。

バード大学は今後どうなるのか

「大学は一人の学長だけで成り立っていない」

一方で、学生や教職員の中には、

「バード大学はボットスタイン氏個人だけで成り立ってきたわけではない」

との声も多い。

同大学は、

  • 刑務所教育プログラム(Bard Prison Initiative)
  • 難民学生受け入れ
  • 社会的弱者への教育支援
  • 芸術・音楽教育

などで国際的評価を受けている。

また、10億ドル規模の基金キャンペーンも完了しており、大学財政自体は比較的安定している。

そのため、大学コミュニティの多くは、

  • ガバナンス改革
  • 性加害対応強化
  • 学生参加型の大学運営

などを進めながら、“ポスト・ボットスタイン時代”への移行を求めている。

まとめ

今回のバード大学問題は、単なる一大学のスキャンダルではない。

米国の高等教育機関では近年、

  • 寄付者と大学の距離感
  • 性加害問題への対応
  • 権力構造
  • 大学ガバナンス
  • 倫理と資金調達のバランス

が厳しく問われている。

長年「進歩的」「リベラル」と評価されてきたバード大学で起きた今回の問題は、“理念を掲げる組織ほど内部の権力構造を検証する必要がある”という現実を浮き彫りにしたとも言える。

今後、大学側がどこまで透明性ある改革を進められるかが、信頼回復の大きな鍵となりそうだ。

出典

  • University World News
    「Bard College president resigns in wake of Epstein inquiry」
    Nathan M Greenfield
  • Bard College Board of Trustees / WilmerHale Report Summary
  • Bard College official communications

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