「生きているのは幸運」双極性障害の診断まで10年 誤診が奪った早期治療の機会

うつ病やPTSD、ADHDと診断されながら、25歳で初めて双極II型障害と診断された心理学者。10年に及ぶ診断の遅れが生活に与えた影響と、遺伝・家族歴・臨床指標を組み合わせた早期予測研究の可能性を紹介します。

うつ病、PTSD、ADHDを経て双極性障害と診断

心理学者のZsofi de Haan氏が気分の落ち込みを経験し始めたのは10代前半だった。当初は思春期のホルモン変化などによるものと考えられていたが、その後も抑うつ状態が続き、重大なストレスを伴う出来事も経験したことから、大うつ病性障害やPTSDと診断された。

しかし、10代後半から20代前半になると抑うつ状態が軽減する一方、落ち着きのなさや集中困難、衝動的な行動などが現れ、今度はADHDと診断され治療を受けることになった。

その後、気分が高揚し思考や行動が加速するような状態が繰り返されるようになり、約1年半にわたり軽躁状態と考えられる症状が続いた。そして25歳のとき、本格的な躁状態によって入院したことをきっかけに、ようやく双極II型障害と診断された。

「早期介入があれば人生は変わっていた」

診断までに要した約10年間は、de Haan氏の人生に大きな影響を与えた。

本来の能力を発揮できなくなり、自分自身が変わってしまった理由も分からないまま生活を続けた。適切な診断を受けるまでには自身に合わない薬物治療も経験し、本人はそれによって状態が悪化したと振り返っている。

友人たちが大学を卒業し、仕事や家庭など人生の次の段階へ進んでいくなか、de Haan氏はようやく適切な治療を開始した。その後、自分に合った薬物療法と病気との付き合い方を見つけ、「以前の自分」を取り戻したと感じるまでにはさらに約3年を要したという。

本人は「早期介入があれば人生は変わっていた」と語り、診断の遅れによって失われた10年間と、本人だけでなく家族が経験した苦痛の大きさを訴えている。

双極性障害を早期に見つける難しさ

双極性障害は、抑うつ状態と躁状態または軽躁状態を特徴とし、人間関係や教育、仕事、日常生活など幅広い領域に影響を及ぼす。

記事によると、人口の約1~3%にみられ、最初の症状は15~25歳頃に抑うつエピソードとして現れることが多い。

問題となるのは、双極性障害を発症する人のなかには、正式な診断基準を満たす以前から軽い躁症状や抑うつ症状を経験している人がいることだ。

こうした初期症状は双極性障害だけに特有のものではないため、将来的に誰が双極性障害を発症するのかを早い段階で判断することは容易ではない。

遺伝・家族歴・臨床症状を組み合わせてリスクを予測

シドニー大学Brain and Mind Centreの研究では、若年期から成人期まで追跡したデータを用いて、躁状態や軽躁状態を早期に予測できる可能性が検討された。

研究では、単一の症状だけを見るのではなく、遺伝的要因、双極性障害の家族歴、抑うつ症状などの臨床的リスクを組み合わせることが、将来的な発症リスクの高い人と低い人を分類するうえで有望だった。

一方で、発症率が低い集団においてどのような方法が最も適切なのかについては、専門家の間でも見解が定まっていない。

つまり、現時点で「将来の双極性障害を確実に予測できる検査」が確立されたわけではないものの、複数の指標を組み合わせることで、診断に至る前の段階からリスクを捉えられる可能性が示されている。

「重症化するまで待つ」診断から変えられるか

現在の診断では、基本的に軽躁または躁状態が一定の診断基準を満たすことが必要となる。そのため、それ以前の段階ではうつ病などとして診断され、双極性障害であることが明確になるまで時間を要する場合がある。

de Haan氏は、この仕組みでは患者がかなり重症化してから診断されることになりかねないと指摘する。

家族歴、遺伝的指標、臨床症状などを適切に組み合わせ、診断基準を完全に満たす以前の変化にも目を向けることができれば、若年層における双極性障害の早期発見につながる可能性がある。

診断の遅れは単に治療開始が遅れるという問題ではない。その間に教育、仕事、人間関係、自己評価など人生のさまざまな部分へ影響が積み重なっていく。

適切な診断後に治療を最適化したde Haan氏は、その後の7年間について、充実した生活を送っていると語っている。早期診断の可能性を高める研究は、症状を早く見つけるだけでなく、患者が失うかもしれない時間そのものを減らす取り組みともいえる。

出典

NewsWire
‘Lucky to be alive’: The decade-long wait for a bipolar disorder diagnosis

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

目次