患者は医師を「消費者のように」選ぶ時代へ 4つ星未満は候補外、AIの影響力も拡大

米国では医師選びにオンライン評価やAIを利用する患者が増えています。75%が4.0以上の評価を求め、AIは医師からの紹介を上回る影響力を持つとの調査結果も。医療機関の「選ばれ方」が大きく変化しています。

目次

「4つ星」が医師選びの最低ラインに

患者が医療機関を選ぶ方法が、急速に消費者型へと変化している。

医療機関の評判管理を手掛けるrater8が米国成人992人を対象に実施した2026 Patient Choice Reportによると、患者の75%が医師を予約する際に4.0以上の評価を最低条件としており、44%は4.5以上を求めていた。

評価をまったく考慮しないと回答した人は11%にとどまる。

つまり、3.8や3.9という決して極端に低くない評価であっても、多くの患者にとってはプロフィールや診療内容、保険適用の有無を確認する以前に、候補から外れる可能性がある。

この傾向は他業種よりも強い。一般企業では4.0未満を検討しない消費者が68%、4.5以上を求める人が31%だったのに対し、医療ではそれぞれ75%、44%となっている。

低評価を生むのは「治療結果」だけではない

患者が医療機関に低い評価をつける最大の要因は、必ずしも治療結果ではない。

調査では「スタッフの態度が悪い・役に立たない」と「医師が話を聞いてくれない」が、それぞれ52%で最大の問題として挙げられた。

長い待ち時間は41%、請求に関する問題は40%であり、患者が評価しているのは医療技術だけではなく、予約から受付、診察、会計までを含めた一連の「患者体験」であることが分かる。

オンラインレビューは単なるマーケティング指標ではなく、医療機関内部の問題を映し出す指標にもなりつつある。

医師探しでもAIが大きな影響力

さらに大きな変化が、AIを利用した医師探しである。

過去1年間に新しい医師を探した患者のうち、36%がAIツールを重要な情報源として挙げた。Google検索結果の34%、他の医師からの紹介の32%を上回っている。

実際に医療機関を変更した患者では、AIの影響を受けた割合は39%まで上昇した。

Google検索結果のどの部分を最も信頼するかという質問でも、37%がAI Overviewを選択しており、ローカル検索のマップ表示を選んだ13%を大きく上回った。

患者が検索結果を一つずつ比較するのではなく、AIが提示した候補から医師を選ぶという行動が現実のものになり始めている。

AIが提示する医療機関は必ずしも公平ではない

一方で、AIが作る医師の候補リストには偏りが生じる可能性も指摘されている。

Medical Economicsが紹介した別の調査では、全米の医療提供者データベースから無作為に抽出した独立系医療機関200施設について、約4,950件の患者を想定した質問をChatGPTへ行った。

その結果、対象となった独立系医療機関は一つも引用されなかった。

AIが参照した情報源で最も多かったのは病院の医師一覧ページで27.5%、医療機関自身のウェブサイトが23%だった。後者も大規模で情報量の多い医療グループに集中していた。

AIによる医師推薦は中立的な一覧ではなく、オンライン上で構造化され、更新された情報を持つ医療機関ほど選ばれやすい可能性がある。

AIの情報が間違っていても患者は信頼する

さらに問題となるのが、AIが提供する医療機関情報の正確性だ。

AIを利用して医療提供者を調べた465人のうち、66%が住所、電話番号、保険情報など何らかの誤情報を経験していた。

それにもかかわらず、60%はAIが示した情報を別の情報源で確認せず、そのまま信用していた。

医療機関情報の不一致は以前から存在する問題でもある。記事で紹介された研究では、主要な保険会社のディレクトリに掲載された約44万9,000人以上の医師を調査したところ、住所情報が一致していた割合は17~28%にとどまった。

AIはこうした既存データを参照するため、元となる情報が古かったり矛盾していたりすれば、その問題も引き継ぐことになる。

「口コミへの返信」が患者の信頼を左右する

今回の調査で特に大きく変化したのが、医療機関による口コミへの返信に対する患者の評価だ。

医療機関がレビューへ返信していることが信頼に影響すると答えた患者は、2025年の42%から2026年には66%へ上昇した。24ポイントの増加は、3年間の調査で確認された指標の中でも最大の変化だった。

患者は低評価そのものだけではなく、その問題に医療機関がどう対応したのかも見ている。

さらに、口コミを「ほとんど、またはまったく投稿しない」と答えた患者は2025年の56%から2026年には42%へ減少。68%は医師から依頼されればレビューを投稿すると回答した。

オンライン上の評判は、一部の患者だけが作るものから、より多くの患者が参加する情報基盤へ変化しつつある。

患者獲得だけでなく「患者離れ」にも影響

変化しているのは新規患者の獲得だけではない。

調査では59%の患者が現在新しい医療提供者を探している、またはより良い選択肢があれば変更する可能性があると回答した。

現在のプライマリケア医を継続する最大の理由は「自分の病歴を知っていること」で39%だったが、その関係も絶対的ではない。

診療時の悪い体験にオンライン上の低評価が重なれば、長年通院している患者であっても別の医療機関を選ぶ可能性がある。

医療機関にとってオンライン評価やAI上の情報は、もはや広告や広報だけの問題ではない。患者の獲得と維持の双方に関わる経営要素となり始めている。

医師の技術や専門性に加えて、スタッフ対応、患者とのコミュニケーション、口コミへの対応、そしてオンライン上の情報の正確性までが「選ばれる医療機関」の条件となる時代が本格的に到来している。

出典

Medical Economics
Patients now shop for doctors like consumers, and the bar just got higher

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

目次