2026年5月25日正午ごろ、東京都中央区銀座の商業施設「GINZA SIX」でスプレーのようなものが噴射され、15人が体調不良を訴えて搬送された。
警視庁築地署によると、現場からは“カプサイシンとみられる成分”が検出されたという。現場付近では、不審な人物がスプレーのようなものを噴射する様子が目撃されており、催涙スプレーが使用された可能性がある。
東京消防庁は大型特殊救急車「スーパーアンビュランス」も出動させ、現場は一時騒然となった。
では、今回検出された「カプサイシン」とは何なのか。
カプサイシンとは?
カプサイシン(Capsaicin)は、唐辛子に含まれる辛味成分で、口に入れた際の“熱い”“痛い”という刺激を引き起こす物質として知られている。
食品として摂取される分には一般的な成分だが、高濃度化されたものは強い刺激作用を持つ。
特に目・鼻・喉・気道などの粘膜に接触すると、
- 激しい目の痛み
- 咳
- 喉の灼熱感
- 呼吸苦
- 流涙
- 皮膚刺激
などを引き起こす。
この性質を利用したものが、いわゆる「催涙スプレー(ペッパースプレー)」だ。
なぜ“唐辛子成分”で人が倒れるのか
カプサイシンは、TRPV1受容体と呼ばれる“熱や痛み”を感知する神経受容体を強く刺激する。
本来、TRPV1は高温刺激を感知するための仕組みだが、カプサイシンは“熱くないのに熱い”という異常刺激を神経に送る。
その結果、
- 激しい痛み
- 気道収縮
- 咳反射
- 過換気
- パニック症状
などが誘発される。
特に閉鎖空間では空気中に拡散しやすく、多数傷病者事案につながることがある。
ペッパースプレーは“非致死性兵器”として使用される
カプサイシンを利用した催涙スプレーは、海外では警察や警備用途でも広く用いられている。
日本でも護身用として販売されているケースがあるが、公共空間で噴射した場合、暴行や傷害などに問われる可能性がある。
一方で、「非致死性(less-lethal)」とされるものの、完全に安全というわけではない。
特に、
- 喘息患者
- COPD患者
- 高齢者
- 小児
- 心疾患患者
では重症化リスクが高まる可能性がある。
海外では、ペッパースプレー暴露後に重篤な呼吸障害や死亡例が報告されたケースもある。
なぜ「スーパーアンビュランス」が出動したのか
今回、東京消防庁は大型特殊救急車「スーパーアンビュランス」を現場へ投入した。
スーパーアンビュランスは、多数傷病者が発生した災害・事故現場で使用される特殊車両で、
- 現場での救護所展開
- トリアージ
- 搬送調整
- 広域災害対応
などを目的としている。
今回のように、
- 原因物質不明
- 多数傷病者
- 化学物質の可能性
があるケースでは、大規模対応が必要になる。
“化学テロ”との違いは?
SNS上では「テロではないか」という声も上がったが、現時点では詳細は明らかになっていない。
ただし、今回のようなケースでは、初動段階で消防・警察・救急が“化学物質事案”として対応することは珍しくない。
特に地下施設や商業施設では、
- 換気状況
- 拡散範囲
- 未知物質の可能性
が問題となる。
現場ではまず、
「何が撒かれたのか」
「有毒ガスではないか」
「二次被害はないか」
が最優先で確認される。
カプサイシン暴露時の対応
催涙スプレーなどによるカプサイシン暴露時には、
- 速やかに現場から離れる
- 新鮮な空気を吸う
- 目を流水で洗浄する
- コンタクトレンズを外す
- 顔や皮膚を洗う
ことが重要となる。
強く擦ると刺激成分が広がるため注意が必要だ。
呼吸苦や症状持続がある場合には、速やかに医療機関を受診すべきとされる。
銀座で起きた“都市型多数傷病者事案”
今回のGINZA SIX事案は、単なる“いたずら”では済まされない。
都市部の大型商業施設では、多数の人が密集しているため、少量の刺激物質でもパニックや集団症状につながる可能性がある。
特に近年は、SNS拡散による混乱や、海外での化学刺激物質使用事例もあり、消防・救急・警察は従来以上に警戒を強めている。
銀座の中心で発生した今回の事案は、日本の都市防災や多数傷病者対応を改めて考えさせる出来事となった。
出典・参考資料
- 警視庁
- 東京消防庁
- Journal of Emergency Medicine
- CDC Chemical Emergencies
- National Library of Medicine


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