米国で広がる薬局従事者の労働組合運動 患者安全を求める「Pharmacy Guild」が全国へ拡大

米国の薬局業界で、薬剤師や薬局技師(ファーマシーテクニシャン)による労働組合運動が急速に広がっている。

2023年末に設立された「Pharmacy Guild(ファーマシー・ギルド)」は、薬局従事者に特化した全米規模の労働組合として活動を開始した。設立からわずか数年で15の薬局を組織化し、数百人規模の会員を抱えるまでに成長している。

背景には、近年の米国薬局業界が抱える深刻な人員不足と業務負担の増加がある。現場の薬剤師たちは、単なる労働環境改善ではなく、「患者安全を守るための運動」であると訴えている。

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発端となったCVSとWalgreensでのストライキ

Pharmacy Guild誕生のきっかけとなったのは、2023年に全米各地で発生した大手薬局チェーンCVSとWalgreensの従業員による集団離職やストライキだった。

当時、多くの薬剤師や薬局技師は、

  • 慢性的な人員不足
  • 処方箋業務の急増
  • ワクチン接種対応
  • 保険関連業務の複雑化

によって極度の負担を抱えていた。

現場からは、

「安全に業務を遂行する時間がない」

「患者への服薬指導に十分な時間を確保できない」

といった声が相次ぎ、患者ケアへの悪影響を懸念する意見が広がっていた。

こうした状況を受け、薬局従事者自身が主体となって立ち上げたのがPharmacy Guildである。

全米へ広がる組織化の動き

現在、Pharmacy Guildには、

  • CVS
  • Walgreens
  • Safeway

といった小売薬局チェーンの従業員だけでなく、

  • 病院薬剤師
  • クリニック勤務薬剤師
  • 専門薬局スタッフ
  • 長期療養施設の薬剤師

なども参加している。

すでに、

  • カリフォルニア州
  • ワシントン州
  • ネバダ州
  • アリゾナ州
  • ロードアイランド州

で組合結成が承認されており、さらにペンシルベニア州やカンザス州でも新たな組織化が進められている。

設立当初はロードアイランド州の数店舗から始まった運動だったが、現在では全米規模の運動へと発展している。

最大の争点は「安全な人員配置」

組合が最も重視している課題は、安全な人員配置の確保だ。

薬局は医療機関の一部であり、処方ミスや服薬指導の不足は患者の健康に直接影響を及ぼす。

しかし近年の薬局業界では、コスト削減の影響もあり、少人数で大量の処方箋を処理するケースが増加している。

Pharmacy Guildは、現在進められている労使交渉において、

  • 最低配置人数の設定
  • 適切な休憩時間の確保
  • 業務量に応じた人員補充

などを求めている。

現時点で正式な労働協約はまだ締結されていないが、組合側は交渉が大きく前進していると説明している。

労働環境だけでなく患者安全の問題

Pharmacy Guildが特徴的なのは、単なる賃金交渉を目的とした組合ではない点だ。

組合側は、職場の課題を継続的に協議するための「Professional Practice Committee(専門業務委員会)」の設置も求めている。

ここでは薬局スタッフと経営陣が定期的に協議し、

  • 業務フロー
  • 設備不良
  • 患者対応
  • 職場環境

などについて改善策を検討する。

問題は人員不足のような大きなテーマだけではない。

例えば、店舗の空調設備が故障しているといった一見小さな問題も、長時間勤務を行う医療従事者にとっては重要な職場環境の課題となる。

業界再編が浮き彫りにした構造問題

Pharmacy Guild設立以降、米国薬局業界は大きな変化を経験している。

2023年には大手薬局チェーンRite Aidが経営破綻し、最終的に全店舗閉鎖へと追い込まれた。

また、Walgreensは投資会社Sycamore Partnersによる買収が行われるなど、業界再編が進んでいる。

こうした出来事は組合活動に直接影響したわけではないものの、現場の薬剤師たちは、

「なぜ自分たちが組織化を進めているのか」

を象徴する出来事だと捉えている。

利益確保を優先する経営環境の中で、現場の人員削減や業務負担増加が進み、結果として患者ケアにも影響が及ぶ構造的な問題が存在すると考えられているためだ。

薬剤師の役割変化が背景に

近年の米国では、薬剤師に求められる役割が大きく変化している。

従来の調剤業務に加え、

  • ワクチン接種
  • 慢性疾患管理
  • 健康相談
  • 予防医療支援

などの役割が拡大している。

薬剤師は地域医療の重要な担い手として期待される一方、その業務量は増加し続けている。

Pharmacy Guildの拡大は、単なる労働運動ではなく、薬剤師という専門職の在り方や、地域医療における薬局の役割を再考する動きとしても注目されている。

今後、最初の労働協約が締結されれば、米国薬局業界全体に大きな影響を与える可能性がある。

出典

Alex Kacik, Healthcare Brew「The Pharmacy Guild reflects on its first few years」

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